2011年2月17日木曜日

山本兼一「利休にたずねよ」

*端正な文章・巧みな構成

山本兼一の「利休にたずねよ」(PHP文芸文庫)を読む。2009年第140回直木賞受賞作。

 天正19年(1591年)2月28日、朝。天下一の茶頭・千利休は、天下人・豊臣秀吉の不興を買い切腹に追い込まれ、死に臨む。
 そこから物語は始まる。かつては秀吉の知恵袋であり、その存在を認められた利休が、なぜ腹を切らなければならなくなったか。時を遡って、利休や秀吉、後妻の宗恩ら周囲の人のさまざまな視点から、己の美学に殉じた因を辿っていく。

 軸も花もなく、白木の薄板に、緑釉の香合が置いてある。
 その前に、すっと伸びた枝が一本。供えるように横たえてある。木槿(むくげ)の枝がある。今年は閏一月があったので、二月だが、もう若葉が芽吹いている。
 あの女は、その花を無窮花(ムグンファ)だと教えた。
「なぜ、花のない枝を……」
「木槿は高麗で、たいそう好まれるとか。花は冥土にて咲きましょう」(「利休にたずねよ」から引用)
――死に臨む利休と、蒔田淡路守のやりとりである。

 肌身離さず持つ緑釉の香合を秀吉が所望したことがあったが、頑として拒んだ。与四郎と名乗っていた19歳の利休は、高麗の高貴な娘に恋をした。香合こそ、その思い人の形見だった……。

目次
・死を賜る 利休
・おごりをきわめる 秀吉
・知るも知らぬも 細川忠興
・大徳寺破却 古渓宗陳
・ひょうげもの也 古田織部
・木守 徳川家康
・狂言の袴 石田三成
・鳥籠の水入れ ヴァリニャーノ
・うたかた 利休
・ことしかぎりの 宗恩
・こうらいの関白 利休
・野菊 秀吉
・西ヲ東ト 山上宗二
・三毒の焔 古渓宗陳
・北野大茶会 利休
・ふすべ茶の湯 秀吉
・黄金の茶室 利休
・白い手 あめや長次郎
・待つ 千宗易
・名物狩り 織田信長
・もうひとりの女 たえ
・紹鴎の招き 武野紹鴎
・恋 千与四郎
・夢のあとさき 宗恩

×  ×  ×

 緑釉の香合・木槿がキーワードですぞ。
 山本兼一さんの小説は初めて読みましたが、端正な文章が心地よかった。能力のある作家さんですな。切腹時から時を遡る構成も巧みです。老作であり力作です。
2011年2月15日読了

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